先日、八十七歳という高齢の男性に治療を行いましたが、術後、次のように述べられていました。
「私は、現在八十七歳にしてインプラントをテレビで初めて知りました。
人生は食生活が一番大切であるという事を日頃から思っており、食べる楽しみしかありません。まわりに話すと『年がいくつになるんね。』とか色々と言われましたが、私はたとえ一ヶ月でも半年でも、おいしいものをおいしいと思って食べる事が出来れば人生幸せだと思います。
知人に良い歯科医院を紹介してもらって、インプラントをしてもらいました。
今では、毎日の食事がとても楽しみで、おいしく味わっているので、「長生きが出来るかも」と思ったりしてます。
インプラントにして、ほんとうに良かったと思いながら最高の日々を送っております。
“インプラントありがとう”」
八十七歳 男性
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「インプラントって本当に良いのですか？」
「テレビや新聞で失敗した話しが出ていますが大丈夫ですか？」
「家族が怖いからやめとけって言うのですけど」など。
ひと昔前であれば、私たち歯科医師の方から提案したインプラントも今では、患者様のほうから 口にされることが多くなりました。
「入れ歯をやめてインプラントにしたいけど、本当に大丈夫なのか？」
「また、どこでやったらいいのか」など。
具体的に知りたいというご希望が多くなりました。
そういったご質問にお答えするのがこの本です。
インプラントへのよくある質問にお答えし、長所・短所を、わかりやすく説明しています。興味のあるところからお目通しいただき、ご自身で判断する参考材料にしていただければ幸いです。
よくある質問一、「うまい先生と、下手な先生がいるの？」
今のところインプラントは担当する歯科医師の技術・経験・知識・考え方にゆだねられています。
厚生労働省の委託で実施された日本歯科医学会の「インプラント治療後のトラブルに関する調査」では、次の内容が挙がっています。
重症な例として、オトガイ神経のマヒ、上顎洞（鼻の横にある空洞）の炎症やそこへの異物（インプラント体）の侵入、異常出血等が挙げられていますが、いずれもあってはならないものです。
インプラント治療を適切に行うためには、あごの骨の状態を詳しく調べることが重要です。そこで当院では治療前にＣＴ撮影を行うようにしています。
ＣＴ撮影後、コンピュータ上のリアルな３Ｄ画像で、インプラントを埋入するためにあごの骨量が十分かどうか、歯根の正確な位置の確認、上顎洞の大きさや、オトガイ神経の位置の確認を行います。
３次元的な情報に基づいて治療計画をたてることで、無理のない安全な治療を行うことが可能になります。
よくある質問二、「合わない人もいますか？」
下記の方には、インプラントが難しいケースが多いです。
ひどい歯周病
全身疾患がある場合 肝臓病、糖尿病、高血圧など
体質、状態はさまざまです。その方に合った治療をさせていただいていますので、詳しくは、スタッフや、歯科医師にお尋ねください。
よくある質問三、「痛くないか心配ですし、手術が怖いです。」
手術自体はきちんと麻酔をかけた状態でおこないます。ご負担の少ない手術を心がけています。
どれくらい痛いか？体に負担か？というご質問ですが、歯を抜くのと同じくらいだった、思ったよりたいへんじゃなかった、というお声をよくいただきます。また術後に痛みを感じることのないよう、痛み止めを処方し対応していますので、安心しておまかせください。
よくある質問四、「インプラントの短所を教えてください」
一時的に禁煙していただく必要があるなど、少し生活に変化は出ます。
これを機に禁煙される方もいらっしゃいます。
まれに、不定愁訴といって、レントゲンなどでは不具合が見当たらないものの、ご本人は不快感を感じるという場合が見られます。
この場合も、当院で誠心誠意対応させていただきます。
よくある質問五、「やはり金額が高いのが気になります」
こういったお声をいただくことは多いです。それだけの価値があるのか？
ご心配されるのはごもっともです。
先日こんな方がいらっしゃいました。田中さん（仮名）といいます。
「私は、物心付いた頃から歯医者とは縁が切れなくて、病院へ行っても一年位経つとまた悪くなって、病院へ行かないと夜も眠れない位痛くなってしまいます。自分の中では、人よりも丁寧に磨いているつもりでした。そんな事が何十年も続き、気が付いた時には歯周病になり、上の歯は５?６本になり下の歯はほとんど被せてありました。
上の前歯が１本むし歯になり、ブリッジ、そうしているとブリッジの土台がダメになり２本抜け、保険では治療できなくなり入れ歯。
入れ歯はしゃべるのが難しく違和感があり、いつまで経っても慣れず金具の所が悪くなり、２本が３本、３本が４本と次第に歯が無くなってしまいました。
そうしている時に、インプラントという治療がある事を知り興味があったのですが、仕事をしているので街の方へ行っても通う事が難しいと思い相談する所もなく、諦めていました。
そうしている時、近くにある事を知り相談してみる事にしました。インプラントにするには時間もお金もかかるし、不安もあったけれど相談して解決してインプラントを入れる事にしました。
インプラントを入れてからは、今までのしゃべる事の難しさ、笑った時に見える金具の嫌な所全て自分のコンプレックスが無くなり気にせず笑ったり、おしゃべりしたり出来る様になりました。
今、どうしようかと悩んでいる人がいるんだったら一日も早く、自分だけで悩まず相談した方が良いと思います！
歯は、放っておいて悪くなっても良くはならないのだから･･･」
五十六歳 女性 |
よくある質問六、「インプラントがすごく安い歯科医院があるのですが、大丈夫でしょうか？」
ある患者様から同様の質問をいただき、調べてもらったところ、安く見えた金額は、一部分の金額を誇張して表現しただけで、トータルで見るとかわらなかった、というご報告をいただきました。
安く見える場合は、なにか理由があるはずです。
その部分を確認せずに、金額が安いというだけで飛びつくのは危険です。
「インプラントにしないリスクもある！」
ここまで、想定できる否定的な事柄もあげながら、よくある質問に答えさせていただきました。
が、これら短所を考慮しても、インプラントを入れるメリットは十分にある、と言い切れます。
というのも、インプラントにしないリスクもあるからです。
その一番に上げられるのは、「周りの歯を守れない」、ということです。
ブリッジにするために大きく削る、ブリッジの支えにする、入れ歯のバネをかける、などは、周りの歯に相当な負担がかかります。
その結果、歯を失う、ということにつながるのです。
これ以上歯を失うことを避ける、周りの歯を守れる、という意味で、インプラントはたいへん意味のある治療方法です。
私がインプラントをおすすめするのも、すごい長所がたくさんあるからです。
実際の例とともに、７つの長所をあげてみましょう。
長所一、周りの歯を守れる！
これ以上歯を失いたくない、と誰もが思うのではないでしょうか。
入れ歯のバネをかけたり、ブリッジの土台にするため周りの歯をけずり橋渡しをすれば、必ずや、周りの歯に負担がかかります。
それはちょうど、三人でやってた仕事があったとして、一人がやめてしまったために、残った二人でやらなければならなくなったようなものです。
残った二人も、過重負担となり、ふらふらに疲れ果ててやめていってしまう、ということが想像できますよね。
歯も同じなんです。三本の歯でやってた仕事を、前後の支えの二本の歯で行い、最終的に周りの二本の歯も失うことに近づく可能性が高いのです。
周りの歯に負担をかけない、周りの歯を守れる治療だからインプラントは良いのです。
長所二、おいしく食べられる！
自分の歯でちゃんと噛めるようになったら、あなたが一番最初に食べたいものは何ですか？
「シャキッとした歯ごたえのある新鮮なお刺身、お寿司が食べたい！」
「赤身のお肉のしっかりしたステーキ！」
「つぶ貝やアワビのような貝のお刺身。」
「大福もち！それも表面にゴマがついたもの！」
「パリパリしたたくわんや、かぶのお漬物！」
インプラントにすることでこれらの希望をかなえた人がたくさん出てきています。
そもそも、「食べる」ことは心と体の健康と深いつながりがあります。
実は食べることは、人間にとって最も身近なレジャーです。
栄養を摂るだけではなく、楽しみでありストレス解消にもなるんですね。
ですから、食べる楽しみを奪われた人はストレスの多い人生です。それを何かで解消しようと衝動買いに走る人もいるくらいです。
逆に、「インプラントにしてから、ストレスがなくなったみたいで、通販での衝動買いが減りました（笑）。」
などというご報告もいただいているくらいです。
また、きちんと噛めて、消化が良くなり栄養が摂れるようになったせいか、「悩みの種だった口角炎ができなくなった」という報告や、驚いたことに、「最近便秘しなくなった」という報告もいただいています。
ちゃんと噛めるようになったらあなたは真っ先に何を食べたいですか？
長所三、運動機能が改善される！
「段差でつまずかなくなった」
「ハイヒールが履けるようになって嬉しい」
「走れるようになった」
「好きなゴルフの飛距離が伸びた！」
「ひどかった肩こりがラクになった」
「姿勢が良くなったと家族から言われた」
「疲れにくいので、孫と遊べる！」
これらはすべてインプラントにした方からのお声です。運動機能とかみ合わせは、密接な関係があります。以前のように自由に体を動かせたら・・・
疲れを感じず、いざというときがんばりがきく自分でいたい、というご希望もインプラントはかなえてくれる場合が多いです。
体がラクに自由に動かせるようになったら、あなたが真っ先にしたいことは何ですか？
インプラントは、あなたの生きる世界を広げてくれます。
長所四、かつぜつ良く話せる！
「電話でも聞き返されることがなくなった」
「カラオケ大会で準優勝にかえり咲いた！」
「ちゃんとしゃべれたので、シルバー人材センターで仕事が見つかりました。」
「英語の発音がよくなった」などと、ご報告をいただいています。
また、会社員の方からは、
「社内での発表をはっきり堂々と行うことができて、昇進につながった」というお声もあります。
日本語はあごを使う言語です。
ですから、歯に不具合があると、たいへん聞き取りにくい話し方になります。
お孫さんから「何言ってるかわからない」なんて言われたくないですよね。
歯を治すことで、楽しくしっかり会話やカラオケができたらいいですね。
長所五、若返り効果も！
「唇に縦線が入って、年齢よりもふけて見られる。」
「あごがしょぼんとして年寄りっぽい顔に。」
「親戚に九歳年上の姉と間違えられた。」
これらは入れ歯の方の悩みです。
インプラントにしてよく噛めるようになった方が一様におっしゃるのは、「若返ったと言われる」ということです。
なぜでしょうか？
ちゃんと噛むことであごの筋肉が発達します。よってシャンとした、はりのある顔立ちになれるのです。
「お母さん、若返ったね！」と息子さんに言われて嬉しかった、というお声も聞いています。
いつまでも表情豊かで若々しいお顔は憧れですね。
長所六、ボケ防止、認知症の予防にも！
あわない入れ歯はボケのもと、と言われているくらいで、噛めることと、ボケないことは、深いつながりがあります。
きちんと噛むと、脳の血液の循環がよくなります。そして脳にちゃんと酸素がいきわたります。
逆に、歯の不具合からしっかり噛めない状態が長く続くと、脳にも影響が出てくるのです。
「最近モノ忘れがひどいかも」
「認知症になって、家族に負担をかけるのは嫌」
という方は、インプラントにすることでその予防にもなる場合が多いということを知っておいてくださいね。
認知症の方と、そうでない人の歯の本数を数えたデータがあります。
名古屋大学の研究グループが行った調査では、七十歳後半の健康な高齢者の歯の本数は平均９本だったのに対し、脳血管性認知症患者の歯の本数は平均６本、アルツハイマー型認知症患者の歯の本数は平均３本でした。噛むことが脳を活性化させ、痴呆症を防ぐと考えられています。
長所七、成人病予防になる！
「赤身のお肉よりも、すきやきのお肉みたいな柔らかい霜降りを。」
「できるだけふわふわのパンを。」
「噛めないから、固い煮物は嫌。入れ歯に挟まるゴマは無理。」
「よく煮込んでやわらかく料理したものを」
これらは入れ歯の人のお声です。
やわらかい食べ物を中心に摂ることは、糖質、脂質中心の食生活に偏ることでもあります。
成人病の引き金になる場合も多いのです。
できるかぎり食物は素材のまま、料理しすぎないことで栄養も壊れないといわれています。
噛めるようになると、食生活の具体的な改善につながるのです。
おわりに
みなさまにぜひ良い選択をしていただきたい、という気持ちをこめてこの本を書きました。
ぜひご家族とともにお読みいただき、参考資料にし、よりよい選択をしていただければと思います。
たった一度の人生です！
あなた自身の人生は後にも先にもこれっきりです。
人生は後戻りができません。
お口の中の健康から、全身の健康作りのお手伝いができたら歯科医師として、この上ない喜びです。
ぜひとも妥協のない治療をお選びいただき、ますますご健勝のライフスタイルを楽しんでいただければという願いをこめて筆をおきます。
このページの内容を、読みやすい一冊の小冊子にまとめました！